鳥の糞を楽しむ

植物研究家 吉川益夫

調査場所 鹿児島県曽於市(そおし)

 

車で都城市に買物に行こうと車庫に向かったら!何だ?我が愛車に鳥の糞が落ちています。あぁー残念!急いでいたので、掃除をしないでそのまま都城市に向かいました。約10km離れている都城市に着いたので、再度鳥の糞を見たら、まだ落ちずにそのままあります。よく見たら白っぽくて透明感のある丸い種があります。ちょっと綺麗だなーと見取れてしまいました。10kmも走ったのに何故落ちなかったのだろう?それにこの丸くて綺麗な種は何だろうか?

さて、この白っぽくて透明感のある丸い種が何だか分かりますか?分かった人は植物博士ですね。どうしても知りたいので、分からなかった人は私と一緒に探ぐりましょう。

まず、鳥の糞に混じっていたから、植物の実ではないかと的を絞りました。次は、今の時期(12月8日)にある木の実は何だろうか?

考えても分からないので植物調査に出掛けましょう。なお、小さな種は5~6mm位です。

それから糞が落ちていたのは、我が家のキンズ(金豆)の木の近くなので、キンズを疑いましたが、調べたらキンズではありません。キンズは知らない人が多いようですから、参考にキンズの実を紹介します。キンズはミカン科キンカン属ですが、小さく・不味いことから食べられません。観賞用です。大きさは南天の実より少し大きいと思って下さい。なお、別名は豆金柑(まめきんかん)とも言います。

下の写真はキンズの種です。調べると種は1個から4個入っているようです。種は下の写真のようなもので、探しているものとは違うようです。


種が美しかったので、どうしても知りたい一心から小さな実を探しに出掛けました。万両、千両、南天等を調査しましたが違うようです。

ある日コバルトブルーの美しい小さい実を見つけました。中の種を出したら探していたのにそっくりです。名前はジャノヒゲ(別名:リュウノヒゲ)です。

と言うことで、ジャノヒゲではないかと推察しました。
ジャノヒゲは知ってる人が多いと思いますが、果実があまりにも綺麗なので簡単に紹介します。
ジャノヒゲはキジカクシ科ジャノヒゲ属で、グランドカバープランツとして庭によく利用されています。花も実も小さく・下向きで・葉に隠れており、なかなか見つけることは難しいようです。


この他、下のような種も鳥の糞として落ちていました。これは万両の種です。万両の種は放射状に白い線が入っているのが特徴です。

最後に鳥と果実について気がついたことを記述します。
①我が家のピラカンサス、南天、万両、千両、キンズの実は、鳥がことごとく食べてしまいました。最初になくなったのはピラカンサス、次いで南天、そして千両、少し遅れてキンズでした。鳥も生きるために必死で食べ物を探しているのだと感じました。

②ピラカンサス(下写真)の実は未熟なうちは毒があるので鳥はあまり食べません。しかし、熟すると鳥には人気があるようで、直ぐなくなります。調べたら柿の実のような味だと書いてるのがありました。きっと鳥には御馳走なのだろう思います。ただし、人間には毒があるとのことですので食べないようにして下さい。

③変化に気付いたことがあります。鳥は今まで金柑をいたずら程度に突(つつ)いている程度でしたが、2024年から金柑を美味しそうに食べ始めたのです。品種にもよると思いますが、我が家の金柑は皮が少し柔らかいようです。また、年とともに酸っぱさが少なくなったのも原因ではないかと思っています。それとも食べ物が少なかったから、金柑(写真下)を食べざるを得なかったのだろうか?

④南天、万両(下写真)、千両、キンズ、ピラカンサス、ジャノヒゲの実は小さい割りに、意外と種が大きいため、可食部は極めて少ないのです。このため鳥は沢山の実を食べないとお腹が満たないのではと思われます。このようなことから綺麗な実が沢山なっていたのに、ある日突然実がなくなっています。納得ですね。

⑤植物には種を運ばせる方法が色々あります。今回は鳥に食べられて運ばれる種子散布を紹介しています。鳥に実を食べて貰って、糞とともに種をばらまいて貰い子孫を残す戦略をとっています。そのためには沢山の実を食べて貰って、沢山の種をばらまいて貰いたいのです。このことから南天、万両、千両、キンズ、ピラカンサス、ガマズミ(写真下)などは、沢山の実をつけているのです。
また、ガマズミ(下写真)、万両などは鳥に種を運んで貰いたいので、鳥が飲み込みやすいように小粒で表面がなめらかなになっているのです。また、鳥は赤色が見つけやすい色であること、さらに赤い実を見ると美味しそうと感じることから、喜んで食べているようです。長年かけて植物は食べて貰う鳥に合わせて実を改良していたことになります。植物の生命力に驚くばかりです。

⑥南天、万両、千両、キンズ、ジャノヒゲなどは、実の大きさの割りに種が大きいですね。これは何故でしょうか?これは種が大きいほど、稚苗が大きく・強くなることから定着しやすくなります。定着しやすいと子孫を確実に残すことが出来るということです。このため植物は少しでも種を大きくしたいのです。
また、果肉を大きくすると植物はそれだけのエネルギーを必要とします。このためエネルギーの無駄を省くため、果肉は少しでも小さくしたいのです。
その結果、果肉は少なく、子孫を残すのに必要な種だけを大きくしているのは、生き延びるための戦略なのです。

⑦ジャノヒゲの実は南天などと比較して、とても実が少なく、色もコバルトブルーで鳥には見つけにくい、葉に隠れて鳥も見つけにくいですね。何故でしょうか?当然ちゃんとした理由があります。理由は、ジャノヒゲは非常に繁殖力が強く、地下茎がどんどん伸びて繁殖しますので、種はあまり重要ではないことになります。このため花を多く咲かせ、実をつける必要がないということです。これでジャノヒゲは花・実が少なくても子孫繁栄には大きな問題とならないことが分かりますね。

⑧ジャノヒゲの実は葉の根元で成熟しますので、葉に隠れており、葉を掻き分けないと見つけることが出来ません。下写真の葉の下に小さいコバルトブルーの実があります。このような見つけにくい場所にある実は、誰が運ぶのでしょうか?上空を飛ぶ鳥にはなかなか見つけられないですね。種はそれほど重要ではないと説明しましたように、鳥に確実に運んでもらう必要がないのです。

⑨何故か地表面で餌を探す鳥がいました。我が家の庭でも地表面をツンツンと突きながら餌を探しています。その鳥はシロハラ(下写真)といいます。シロハラが実を食べて、少しは種を運んでいるのではないかと思います。

⑩我が家の塀にもあちこち鳥の糞が落ちており、汚いので掃除をしています。車にも何回か鳥の糞が落ちており、そのたびにいやな思いをしました。それなのに汚い鳥の糞を楽しむとは、どうかしているのではと思われたかもしれません。
今回は、1・2枚目の写真のように綺麗な種を見つけたので、どうしても何の種か知りたくなったので調査することになったという訳です。

⑪最後まで鳥の「フン:ウンコ」の話しに付き合って下さったことに感謝申し上げます。
「鳥は縁起の良い生き物」とされています。また、日本神話では日本を作った神様であるイザナギとイザナミに国土の作り方を教えたのがセキレイという鳥だと言われています。
「動物のうんこを踏んだら、運がつく」、「鳥のフンが体や持ち物に落ちてきたら、幸運が訪れる前触れ」、「鳥のフンが手に落ちたら、金運が上昇している」、「うんちを踏む夢は、近いうちに思いもよらないほど大きな幸運がやってくることを意味する大吉夢」とも言われています。
最後まで「フン:ウンコ」のブログを読んで頂いた皆様には、うんと沢山、幸運(うん)がやってくることを祈っています。

◎おまけ
運を呼ぶには、「自分自身には運があると信じること」、「前向きな考え方を心がけること」が効果的とのことです。

コメント

  1. 凄ーい!

    観察力 洞察力
    楽しく読みました

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  2. いいね👍️

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  3. いいね👍️。ありがとうございます❗

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    1. 有り難うございます。喜ばれるように頑張ります。

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