珍しいサツマイモの花を見つけた

植物研究家　吉川益夫

調査場所　鹿児島県曽於市（そおし）

サツマイモの花の原産地は、メキシコ南部からペルーにかけての熱帯アメリカだから、熱帯や亜熱帯ではよく開花するが、北緯３０度以上の地域での開花は非常に珍しいといわれている。因みに、曽於市末吉町の緯度は３１度３９分であるから滅多に花を見ることはない。

植物調査に出掛けていたら、ラッキーなことにサツマイモの花が沢山咲いてるのを見つけた。サツマイモの花の時期は通常８月から１０月であるが、何と見つけたのが１１月６日である。今年は異常に暑い日が続き､花の咲き方も狂ってきたのではなかろうか。

それにサツマイモの収穫は少し前に終わり、土手まで伸びていた蔓に咲いているのだ。１本の蔓だけではなく多数の蔓に咲いている。

この日は天気も良く､花に多くの蜂が蜜を求めて訪れていた。

サツマイモはヒルガオ科サツマイモ属で、その花は朝顔の花によく似ており美しい。因みに、朝顔もヒルガオ科サツマイモ属である。

サツマイモの花びらの外側は淡い紫色で、中心部分は紫色である。さぁ、花弁は何枚だろうか？うぅーん、漏斗状の形をしており、くっついて一つになっているので花弁１枚かなと単純に考えてしまう？違うような気もするが、単純に数えられないので分かりにくい？

その前に、萼を数えようと試みたが、くっついており数えにくいので、花弁を外して数えたら５枚あった。なお、同じ仲間である朝顔の雄しべを数えたら５本あった。

白矢印が雄しべで５本、赤矢印が雌しべ１本である。

さて、サツマイモの花弁であるがどのように数えたら分かるのか？どこからどこまでが花弁一枚の範囲か？凹んだ所を中心とした「赤（」の範囲か、凸（つばく）んでいる所を中心にした「黄色（」の範囲だろうか？

ペチュニアの花弁が少し割れており、数えやすいので調べると、花の後ろ側中央に厚めの線が走っている。この線は凹んだ所ではなく、凸部分に走っている。

因みに、ペチュニアはナス科ペチュニア属である。

ペチュニアの花を表側から見ると、この線が凸部分にあることと花弁の中央になっていることが分かった。ということは、二つ上のサツマイモの花も同じ作りではなかろうかと判断する。

サツマイモの花を後ろ側から見ると、５本の太い線が見える。この太い線は凸部分にあることが分かった。この太い線がある所が花弁の中央であることから、３つ上の凸部分の「黄色い（」部分が花弁１枚ということになる。

つまり、太い線の走っている凸部分が５カ所あるので、花弁は５枚ということが判明した。

また、上記で調べたように萼５枚、雄しべ５本であったことから、サツマイモの花は５に関係していることも分かった。（５数性）

これは開花直前の蕾である。５カ所の凸部分が１枚の花弁ということになる。

これは完全に開く前の花である。赤い矢印が凸部分で、黄色い矢印が凹みの部分である。すなわち赤の矢印の両サイドが１枚の花弁ということになる。

しかし、花が完全に開花すると、どこが凸部分か凹部分か分かりにくくなる。この場合は花の後ろ側（３つ上の写真）を見ると分かり易いので､後ろ側をご覧下さい。

友達（猿渡君）にサツマイモの花（写真）を送ったら、花は食べられるとの連絡があった。

サツマイモの花は食べたことがないけど、茎も芋も食べられるから花も食べられるはずだ。

それに牛は葉・茎・芋を食べているから当然問題ないと判断し、花を湯通ししてドレッシングで食べてみた。特別な味・香りはなく癖がないため食べやすい。

しかし、サツマイモの花には滅多にお目にかかれないこと、咲いても花が極めて少ないことから食べる機会はほとんど無いのではと思われます。

なお、同じ仲間である朝顔の花は毒があり食べられないので、決して食べないでください。

少し長くなりますが、１１月６日、サツマイモの花を観察するため花瓶に２蔓ほど生けておいた。毎日５～６個の花が咲き、もう生け花気分であった。この写真を鹿児島市の生け花をしている友達（市来さん）に送ったら「素晴らしい生け花で、良い感じです」とのお褒めの言葉を頂きました。

１１月１９日、蔓を生けてから１４日目であるが、まだ花が毎日咲き続けています。

まず花が長く咲き続ける理由が分かった。それは蕾の数が多いことが理由である。

それから、いつまでも葉が生き生きとしているのです。葉が萎れる気配は全くありません。どうして花瓶の中でこんなに長持ちがするのだろうか？不思議でならない？

何故こんなに長持ちするのか原因が分かりました。花瓶から蔓を出したら、１４日間で元気な白い根が沢山できているではないか。元気な根が水から養分を吸収していたから、いつまでも元気だった訳です。また、同様に花も咲き続けていた訳です。

サツマイモの花がなくても、緑鮮やかな葉だけでも家の中で楽しみませんか。きっと感動することと思います。

猿渡君の奥様から花が咲いた後に果実ができるかとの質問がありました。花瓶に生けてるものは全く結実していません。花が咲いた後に花弁や萼など次々に落ちています（写真下）。畑に咲いてるのは昆虫が沢山訪れていたので受粉しているはずですので、後日観察に行ってきます。

しかし、調べたらサツマイモの花は結実することは殆ど無いとのことです。サツマイモの果実とはどんなのだろうか？考えただけでもワクワクしますね。もし畑のサツマイモが結実していたら大発見です。観察に行くのが楽しみです。

まだ色んなことに気がつきましたが、長くなり過ぎましたのでこれで終わります。曽於市の特産品であるサツマイモの魅力を多くの人に教えて下されば幸いです。

「曽於市案内人ブログ」で検索すると、いつでも見ることができますので、これからも楽しんで下さい。

曽於市案内人