ヤマボウシの秘密!
植物研究家 吉川益夫
調査場所 鹿児島県曽於市
花は5~7月で、果実は9~10月です。このヤマボウシの花や果実にはとても面白い秘密が隠されています。この秘密を少しずつ解明していきましょう。
①ヤマボウシ(山法師)の基礎知識
ミズキ科 ミズキ属
原産地:日本、朝鮮半島、中国
名前の由来:白い苞と、その真ん中にある花の丸い集まりを、肩まで覆う白い頭巾をかぶった坊主頭の僧兵に見立てたことから
落葉小高木~落葉中高木で紅葉も綺麗
雌雄異株(雌花の木と雄花の木がある)
②ヤマボウシに似たハナミズキ(アメリカヤマボウシ)
ミズキ科 ミズキ属
原産地:北米東部からメキシコ北東部
日本には大正時代に渡来
東京市長であった尾崎行雄がアメリカワシントンD.C.へソメイヨシノを贈った際、その返礼としてハナミズキが贈られた
③ヤマボウシの花
白い4弁の花が美しく見えますが、花弁のように見えるのは花弁ではなく、総苞片と呼ばれるものです。花弁ではなく総苞片のため、観賞期間が長いのが特徴です。
最近、花色は白色だけでなく、ピンク・クリーム色などもあり楽しみが増えています。
花形は、仲間のハナミズキに非常に似ていますが、総苞片の先端に窪みがあるのがハナミズキで、先端が尖るのがヤマボウシです。
本当の花は、大きな総苞片の中央で球状にまとまって多数咲き、花弁は淡黄緑色で4枚、雄しべは4本あります。
④ヤマボウシの果実
移動のできないヤマボウシは、子孫を広範囲に広げるため鳥に食べて貰い、種をできるだけ遠くに運んで貰って、あちこちに糞として種を地上に落して貰う必要があるのです。そして広範囲で発芽し、子孫を絶やさないようにしています。
そのためには鳥が喜んで食べるような美味しさが求められます。嬉しいことに人が生で食べても美味しく感じられます(甘くて柔らかい)。あえて言うとマンゴーの味がします。生を凍らせてシャーベットで食べても美味しいです。この他、ジャムや果実酒に利用されます。
⑤果実の皮は多数のものを貼り合わせたようになっているが?
果実の皮を見ると多数のものを貼り合わせたようになっており、その中心が凹んで黒っぽくなっています。どうして変な形になったのだろうか?
上記の「③ヤマボウシの花」を見て下さい。「本当の花は、大きな総苞片の中央で球状にまとまって多数咲き」となっています。ならば、多数の花が咲いた後に多数の果実ができるはずです。
しかし、1つの果実しかできていません。理由は多数の果実が1つにまとまって、1つの果実になったからです(集合果)。
本来なら多数の花が咲いたのだから、多数の果実ができるはずなのに1個の果実しかできていないことからも理解できます。
つまり、果実は集合果でサッカーボールみたいに、多数の皮を貼り合わせたように球形を作っているのです。
それから、その1枚ごとの中心に凹んだ黒いのがあります。これは花柱の痕跡が残っているからです。
種の数は何個入ってるのか色々調べたら、1~3個と1~4個というのがありました。もう少し調べたら8個というのもありました。私なりに整理すると1~4個が妥当ではないかと結論づけたい。
⑦沢山の集合果であるのに、種はたった1~4個しかないのは何故だろう?
沢山の花がまとまって咲き、沢山の果実ができ、それが1つの果実になったのだから沢山の種ができているはずなのに、どうして種の数は少ないのだろうか?
1つの集合果になったのだから、最低1つ以上の果実ができれば成功と考えたのだろうか?受粉が影響しているのだろうか?残念ながらこの理由は解決できなかった。
⑧皮は多数のものを貼り合わせているようだが、果たして何個を貼り合わせているのか?
これについては誰も研究していないようです。
多数の本物の花が咲いている花序から多数の果実になるはずが1つの集合果になっているわけだから、この多数の果実分だけが貼り合わされているはずです。では何個が貼り合わされているのか知りたくて数えてみました。その結果42個はちゃんとした花柱の痕跡がありました。
それ以外に花柱の痕跡がない貼り合わせも約20個ありました。
ということは、42個は花が咲き、果実になったということだろうか。残りの約20個は未熟な果実であったということだろうか。
他の研究結果から集合花の数を調べると、20~30個、20~40個というのがありましたが、今回40個以上もあることが解明できました。そこで私は20~50個の花がつくと決定します。
⑨果実の効能は?
滋養強壮、疲労回復、目の疲れの緩和、整腸作用、老化予防、抗酸化作用の効能があるそうです。
⑩同じ樹木なのに花が咲く枝と咲かない枝があるのは何故だろう?
調べると、「特定の枝に花が咲かない原因としては、剪定時期を誤って花芽のついた枝を切り落としたことが考えられます」とあるが、剪定をしていないのに花が咲かない枝があるのです。不思議でなりません。考えられるのは、日当たりや成長度合いが異なることが原因ではないかと推察されます。
⑪長いレポートを最後まで読んで頂きましたことに感謝申し上げます。ヤマボウシの秘密が満載ですので多くの人に教えて頂くと有り難いです。
まだヤマボウシの果実を食べたことがない人は、是非どんな味かを楽しんで下さい。
最後に、研究材料を気持ちよく提供して下さった義理姉に深く感謝申し上げます。
素晴らしい❗
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