ランタナの花は変化する

植物研究家 吉川益夫

調査場所 鹿児島県曽於市

                宮崎県都城市

【基礎知識】

科・属名:クマツヅラ科 シチヘンゲ属(ランタナ属)

原産地:熱帯アメリカ、ブラジル、ウルグアイ

別名:七変化(しちへんげ)

開花期:5~10月

花色:白、赤、ピンク、黄、オレンジ、複色

注意:①実・種子・葉に有毒なランタニンが含まれている ②簡単に大繁殖をし、環境に悪影響を及ぼす可能性ある

蕾はどんな形をしているか知っていますか?意外にも四角形というか星形というか下の写真のような形をしています。この蕾からどのような花が咲くのか楽しみです!いや、ピンク色の蕾だけでも十分楽しめますね。


おぉ~、2輪だけ咲きました。さぁ、次はどんな咲き方をするのだろう!

外側から咲き出したようですが、まだ上部が咲いていません。花色は白色で中央が黄色です。

おぉ~、外側が全部咲きました。花は外側から咲くことが分かりました。しかし、中央部は蕾でまだ咲いてませんが、このままでも十分綺麗です。

下の写真で最外側の花が変化しているのが分かりますか?外側の白色が淡いピンクに、中央の黄色が濃いピンク色に変化しています。この段階では中央がピンク色(蕾)、その外側が白色と黄色、最外側が淡いピンク色と濃いピンク色で同時に3つの花を楽しむことができます。

どうやら中心部まで全部花が咲きました。中央の白色と黄色、外側が淡いピンク色と濃いピンク色の花になっています。このように花色が変化することから「七変化」とも言うのですね。
では、なぜ花色が変化するのだろうか?「虫は黄色い花を好む傾向があり、種をつけるために受粉する前は黄色で、受粉が終わると赤色に変化していく」という説があるように、進化の過程で受粉が終わっていない花に虫が集中するようにしているわけです。つまり受粉が終わった花は中心が黄色から濃いピンク色に変化して、虫を受粉していない花(黄色)に集まるように仕掛けているのです。ランタナの戦略に脱帽です。

なお、種類によっては黄色から赤色に変化したりする花もありますので、違う花色を観察するのも楽しいですよ。

さて、1枚の写真で蕾から花が咲くまでを順番に見てみよう。ここでは蕾が①→②→③の順にどんどん大きくなっているのが分かります。さらに①と④の大きさを比較すると、もの凄く大きくなっていることが分かります。このことから花を咲かせるには莫大なエネルギーを使うことが明確に理解できます。

次は果実が出来る様子を見てみよう。最初に花が咲いたのは下側(外側)で、受粉も最初に行われたので、下側から果実が出来ます。
最初、果実の色は緑色です。写真の下側では果実が出来ているのに、まだ頂上では花が2輪咲いています。この2輪はピンク色になっているので、どうやら受粉を終えているようです。従って、全体に果実が出来るのは間もなくでしょう。

では果実の色は変化するのでしょうか?下側は黒紫色になっています。上側は緑色が少し薄くなっているようです。これから黒紫色に変色するようです。
では何故果実の色が変化するのだろうか?果実を常食とする鳥は、緑色より赤い実と黒い実を好むこと・見つけやすいことから、緑色から黒紫色に変化することを進化の過程で身につけたのでしょう。

ランタナは、子孫を残すために動物や鳥たちに果実を食べてもらい、種を色んな場所に蒔いてもらう必要があります。しかし、動物は果肉と一緒に大切な種まで噛み砕いてしまいます。そのため種を噛み砕かない鳥だけに果実を食べてもらいたいとランタナは長い年月の間に学び、鳥以外の動物に食べられないように種にも毒を作ることにしたのです。つまり、鳥はこの毒には平気であるということも長い年月の間に学んだのでしょう。植物の学習力に驚愕するばかりです。

今回もランタナから多くのことを学びました。植物は動くことが出来ないというハンディを負っている中で、どうして子孫を存続させられるかということを長い年月を掛けて学び、自然の中で共存しながら上手に生きています。
残念ながら人間は生きていくのに邪魔なものは殺しています。自然と共生しながら相手を傷つけず生きる道を探すことが出来ないものでしょうか。

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