見取れてしまうツルニンジン(蔓人参)
植物研究家 吉川益夫 撮影場所 鹿児島県曽於市財部町 曽於市の植物を全部見ようと植物調査に出掛けています。今回はツルニンジンの紹介です。 ツルニンジンを毎年どこかで探し観察していますが、何回見ても飽きが来ない花の一つです。 キキョウ科 ツルニンジン属 和名の由来:根が朝鮮人参に似ており、蔓性であることから 花期は8〜10月 蕾の時は、萼が花弁のようになっていて、薄緑の紙風船のように見えます。 萼が開き始め、中の花弁が見えてきました。 花はおしとやかに下向きに咲きます。 花弁の外側は白(緑)色で、基部に薄い紫褐色の横筋と縦筋が見えます。 花弁の先端は5裂し反り返ります。内側に紫褐色の斑点があるのが特徴です。 花弁の一部を剥がして、もっと詳しく見てみましょう。黄緑色の子房に黒色の五角形、花弁の基部に円形で幅広の紫褐色、花弁のやや上に円形の細い紫褐色、そして全体的に紫褐色の縦筋があり、見事なデザインとなっています。 もっと細かく見てみましょう。黒の五角形の上に白い五角形が見えます。これは花弁の基部の幅広の紫褐色は円形だと思っていましたが、幅広の下部は見事な五角形になるよう計算されていたのです。 また、この白い五角形の辺の中央が黒い五角形の頂点に重なるように計算されていたのです。ここだけを見ても見応えがあります。 さらに、上側に細い円形の茶褐色がありました。これはそのまま円形になっています。 これらを頭に入れて下側から順に見て見ましょう。最基部に黄緑色の五角形、黒い五角形、白い五角形、幅広で紫褐色の円形、白い円形、細い紫褐色の円形、最外側に紫褐色の縦筋入り斑点となっています。ツルニンジンの驚くべきデザイン力にびっくりです。 次に、雄しべと雌しべです。雄しべは5本、雌しべは1本です。雄しべは花弁の裂けた部分に位置し、黄色い葯が花に彩りを添えています。真ん中に見える雌しべの柱頭は丸く、その中心が三角形になっており、これまた花をより一層美しくしています。再度ご観賞下さい。 上の写真は雌しべが丸くなっていましたね。いわゆる花粉が活動する雄性期(雄として働く時期)で、中心の雌しべはまだ眠っている状態です。 下の写真を見て下さい。中心の雌しべが3裂しています。いわゆる雌性期(雌として働く時期)です。ツルニンジンは雄しべと雌しべが一緒に活動するのではなく、時期をずらして活動しているのも一...